無事に相撲道を全うしてくれればいい
無事に相撲道を全うしてくれればいい

無事に相撲道を全うしてくれればいい

けがなく元気に自分の相撲を取ってほしい

大相撲初場所で、長崎県平戸市出身の平戸海が勝ち越しに王手をかけている。先場所は10勝を挙げており、さらなる勝ち星の上積みが期待される。父、坂口大作さん=同市紐差町=は本場所開催中、仕事場近くの神社に毎日お参りする。初土俵を踏んだ2016年以来、一日も欠かさないルーティーン。勝敗ではなく、ただ息子の無事を祈り続けている。

初場所8日目となる15日午前7時前、同市水垂(みずたり)町の素盞鳴(すさのお)神社。まだ暗い参道の石段を上る坂口さんの姿があった。境内には平戸海関が少年時代に鍛錬した土俵もある。社殿の照明をつけ、さい銭を投げて鈴を鳴らす。かしわ手を響かせると、一心に祈った。

「けがなく元気に自分の相撲を取ってほしい、それだけ。勝ち負けのことなど何も考えていません」

息子が“強豪力士”として全国各地に遠征した小中学生時代は、必ず同行した坂口さん。妻の美香さんは「夫が常に気持ちを強く持つよう諭したおかげで、今の息子の強い精神力があると思う」と評す。

多くのファンは地元のヒーローの活躍とさらなる番付上昇を願う。坂口さんは期待に「ありがたいが、私は数字や地位など求めていない。無事に相撲道を全うしてくれればいい」と静かに語る。

そのぶれない心は土俵上の平戸海関と二重写しになるようだった。